使い方
心拍ベースのトレーニングは、強度を5つのゾーンに分け、それぞれに対応する生理的な適応が異なります。ゾーン1(50〜60%)はアクティブリカバリー、ゾーン2(60〜70%)は有酸素ベースと脂肪燃焼、ゾーン3(70〜80%)はテンポ走、ゾーン4(80〜90%)は乳酸閾値、ゾーン5(90〜100%)はVO₂ max インターバル。利用には最大心拍数の推定値が必要です。古典的なFoxの式(220 − 年齢)はシンプルですが、若年者では過大評価、40歳以上では過小評価しがちです。Tanakaの式(208 − 0.7 × 年齢)は18,000人以上を対象としたメタ解析から導かれ、特に中高年でより正確とされています。いずれも推定値で、同じ年齢でも個人差で±10〜15 bpm 程度ばらつきます。より個別の値を求めるには、Karvonen 法(安静時心拍数を入力)を有効にしてください。心拍予備能(HRR = 最大 − 安静時)を基準にゾーンが計算され、体力水準を反映できます。
計算式
割合 = 選択ゾーンの下限/上限を小数で表したもの。Z1 = 0.50〜0.60、Z2 = 0.60〜0.70、Z3 = 0.70〜0.80、Z4 = 0.80〜0.90、Z5 = 0.90〜1.00。安静時心拍数は、朝起きてベッドから出る前の測定が理想的です。Karvonen 法は「鍛えている人ほど安静時心拍が低く、心拍予備能(HRR)が広い」点を反映します。
計算例
- 35歳、Tanaka の式:最大心拍数 = 208 − 0.7 × 35 = 208 − 24.5 = 183 bpm。
- ゾーン2(最大の60〜70%)= 0.60 × 183 〜 0.70 × 183 = 110〜128 bpm。楽な有酸素。
- ゾーン4(80〜90%)= 146〜165 bpm。閾値・レースペース。
- 安静時60で Karvonen を使う場合:HRR = 183 − 60 = 123。ゾーン2 = 0.60 × 123 + 60 〜 0.70 × 123 + 60 = 134〜146 bpm。鍛えている人ほど予備能が大きいため、単純な%最大よりやや高めの値になります。
よくある質問
Tanaka と Fox、どちらの式を使えばよいですか?
基本はTanakaを推奨します。Foxの式(220 − 年齢)は1971年に小規模なデータから提案された古い式で、25歳未満では過大評価、40歳以上では過小評価しがちなことが知られています。Tanakaの式(208 − 0.7 × 年齢)は2001年に発表された18,000人超のメタ解析から導かれ、成人の幅広い年齢層でより精度が高いとされています。差は両端で大きく、60歳ならFox=160、Tanaka=166ほど。35歳ならどちらもほぼ185。ざっくり目安ならどちらでも良く、より正確な値を求めるならTanakaがおすすめです。
なぜ Karvonen 法だと(多くの場合より高い)違う数値になるのですか?
単純な%最大は「0 〜 最大心拍」でゾーンを区切ります。Karvonen 法は「安静時心拍 〜 最大心拍」(つまり心拍予備能)でゾーンを区切るため、下端の心拍数が安静時心拍までしか下がりません。安静時心拍が60なら、そこから上にゾーンが広がります。およそ70%未満ではKarvonen の方が%最大より高めの値になり、90%以上ではほぼ一致します。利点は、同じ年齢でも安静時心拍45の鍛えた人と75の運動不足の人で、実用的なゾーンが明確に異なってくる点。信頼できる安静時心拍が分かるならKarvonen を推奨します。
ラボのテストなしで実際の最大心拍数を知るにはどうすればよいですか?
実走で測ることもできます。15分ウォーミングアップ後、3分強めに走り、2分ジョグ、続けて3分全力走。胸ベルトの心拍計で計測した最高値が実際の最大心拍に近い値です(手首の光学式センサーは強度が高い場面でスパイクが出やすく信頼性に劣ります)。サイクリストなら坂で同様のことが可能。運動初心者、心疾患のある方、医師から最大強度の運動許可を得ていない方は行わないでください。一般的なトレーニングなら計算機の推定値で十分。実測は精度が必要なときだけで構いません。
強度の高い練習中、時計がゾーン5を大幅に超える値を表示した場合は?
主な原因は2つあります。1つ目は、使った式があなたの実際の最大心拍を低く見積もっていること。全力インターバルで計算上の最大より5〜10 bpm 高い値が安定して出るなら、間違っているのは式の方であり、心臓は正常です。多くの時計では最大心拍をユーザー設定で上書きできます。2つ目は、光学式(手首装着)センサーが走行ピッチやペダルケイデンスに「ロック」されてしまい、ケイデンスを心拍として180+などと表示するケース。胸ベルト式心拍計を使えば回避できます。どちらでもなく、その高値が胸の痛み・めまい・強い息切れを伴う場合は、運動を中止して医師の診察を受けてください。