使い方
投資収益率(ROI)は、投資がいくら儲かったか・損したかを最もシンプルに測る指標です:利益 ÷ 投資額 を%で表す。1,000 ドルが 1,300 ドルになれば 300 / 1,000 = 30% の ROI。簡単。ただし落とし穴があります:時間軸なしの ROI は意味を持ちません。30% を 5 年で稼ぐのは凡庸、30% を 6 ヶ月で稼ぐのは卓越。同じ ROI でも年率換算リターンは大きく異なる場合があり、フェアに比較する唯一の方法はすべてを共通の年率に換算することです。
その換算が「年平均成長率(CAGR)」で、定義は (最終値 ÷ 当初値)^(1/年数) − 1。「同じ最終値を生み出す一定の年率は何 % か」に答えます。プロの投資家が CAGR を提示するのは、時間変数を消して任意の投資同士を直接比較できるからです。2 年間で総 30% は CAGR 14.0%、10 年間で同じ 30% なら CAGR 2.7% — 同じ ROI でも質はまったく違う。S&P 500 は 1928 年以降の名目 CAGR が約 10%(インフレ控除後の実質約 7%)。これを大きく超える数字には注意 — リスクが格段に高いか、期間が都合良く選ばれているかのいずれかです。
実用上のポイント。(1) ROI は時間を無視し、CAGR はボラティリティを無視します。CAGR がともに 8% の 2 つの投資でも、一方は安定推移、他方は 3 年目に 40% 下落して回復した、ということがあり得ます。リスク調整後の比較には、リターンとボラティリティを組み合わせた Sharpe レシオなどを参照してください。(2) インカム型投資(賃貸、配当株)にはトータルリターンを使う:値上がり益+再投資キャッシュフロー。賃貸物件は値上がり 0% でも年 6% の家賃利回りなら、それは CAGR 6% であって 0% ではない。(3) インフレは名目リターンを侵食します。実質リターン = (1 + 名目) / (1 + インフレ) − 1。インフレ 3% のもとでの名目 7% は実質 3.9%。どちらを引用しているか常に明示すること。(4) ROI と内部収益率(IRR)を混同しないこと。IRR は時間軸でキャッシュフローが不均一なケース(毎年の投下と配当がある事業など)を扱い、NPV をゼロにする割引率を解きます。ROI は「一回入金、一回出金」を前提とするため、より複雑なシナリオには IRR が適切なツールです。
計算式
当初投資額 は最初に投じた金額。最終値 は終了時のポジションの価値(または売却価格、再投資した分配金を含む)。年数 は保有期間で、端数年も可(1.5 年 = 18 ヶ月)。名目 は計算した CAGR、インフレ は同期間の年平均インフレ率。実質リターンは購買力がどれだけ実際に増えたかを示します。
計算例
- 5 年前に株式に 10,000 ドル投資しました。現在の価値は 15,000 ドル。
- 利益 = 15,000 − 10,000 = 5,000 ドル。総 ROI = 5,000 / 10,000 × 100 = 50%。
- CAGR = (15,000 / 10,000)^(1/5) − 1 = 1.5^0.2 − 1 = 0.0845 = 年率 8.45%。S&P 500 の歴史的平均と概ね同水準 — 堅実だが特別ではない。
- 5 年間のインフレが平均 3%/年なら、実質 = (1.0845 / 1.03) − 1 = 5.29%。実際の購買力上昇は年率 約 5.3% — 意味はあるが、見出しの 8.45% より明らかに小さい。
よくある質問
年率換算 ROI(CAGR)が総 ROI より重要なのはなぜ?
総 ROI はリターンと時間を 1 つの数字に丸めるため、お金が実際にどの速度で増えたかが見えなくなるからです。総 ROI 100% は素晴らしく聞こえても、30 年かかっていれば年率 2.3% — インフレ以下です。CAGR は時間変数を取り除いて、2 つの投資を同じ土俵で比較可能にします。目安:CAGR 4% 未満は概ねインフレ並み、4〜7% は債券・保守的ポートフォリオ、7〜10% は長期株式市場の平均、10% 超はスキル・レバレッジ・あるいは持続不能のいずれか。誰かが保有期間を明示せずリターンを示してきたら、感心する前に頭の中で CAGR に換算してください。
手数料と税金は計算から差し引くべきですか?
正直な数字が欲しいなら、はい。売買手数料、ファンドの運用報酬(経費率/信託報酬)、アドバイザー手数料、実際に支払った税金(譲渡益税、配当税)を差し引いてください。結果が「ネットリターン」 — 実際にあなたの手元に残った額。調整前の「グロス」ROI はファンド広告が掲げる数字で、組織的に過大表示されています。グロス 9% は信託報酬 0.5% で 8.5%、譲渡益税で 7% に — これが実際に資産を増やした数字。課税口座では年次分配に対する税ドラッグも考慮を、税制優遇口座(米 401k/IRA、英 ISA、日本の NISA/iDeCo など)ではグロスとネットの差は大きく縮みます。
継続的な追加投資や引き出しはどう扱いますか?
シンプルな ROI は崩れます — 公式は「一回入金・一回出金」を前提とするため。継続的なキャッシュフローには「時間加重リターン(TWR)」か「金額加重リターン(MWR/IRR)」のどちらかを使います。TWR は入金タイミングを除外して投資自体のパフォーマンスを示し、ファンドマネジャーの比較に有効。MWR はタイミングを含み、あなた個人の結果評価に有効。両方とも期間ごとのキャッシュフロー一覧が必要で、表計算(Excel:MWR は XIRR、TWR は幾何連鎖)またはポートフォリオ管理ソフトで計算します。一定額の積立に対する簡易近似としては、平均残高を「元本」、期間を時間として扱う方法 — 概算には十分ですが、精密比較には不向き。